「国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源」を読んだよ⑥

こんばんは。最近仕事が途方もなくハードで全く読書できてませんが、久々に土日ゆっくり過ごせました。先週は土日ともパワーポイントいじりで終わってしまい。全く能動的に過ごせなかったので、今週はホントゆっくり過ごせていいですわー

休みに仕事するものではないですね。

引き続き、「国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源」を読んでます。悪循環のとこの話なんで、ちょっと退屈かなーと思ってましたが、メチャ面白く読めました。

 

<悪循環が断ち切れない>

国家の繁栄を阻害し衰退させる要素の前に、繁栄をもたらす包括的政治制度の出現を促す要素を復習。名誉革命フランス革命後により包括的な政治制度の出現を大きく促した要因として下記の要素が紹介されている。
            
①    多元主義:包括的制度を担う政治勢力の存在(商人、実業家階級の台頭)

創造的破壊の力を開放して、自分たちも恩恵を得たいと考えた        

新興勢力は革命的な同盟の主要メンバー        

自分たちが餌食になる収奪的制度の再発展は願い下げだった        

②    名誉革命フランス革命で形成された広範な同盟の性質        
商人、産業資本家、ジェントリ、幅広い政治勢力が支援した運動だった。        

フランス革命も同様である。様々な立場の人が政治に参加することがポイント。

選挙制度があるかないかといった、形だけの民主主義でなく)
            
③    政治制度の歴史        
イングランドマグナ・カルタ、フランスは名士会。

両国とも議会および権力分担という伝統があった。        

両革命もすでに絶対主義政権やそれを目指す政権の支配力が弱っていた最中に

発生したが、幅広いグループの利害が政治に反映される。

衰退と貧困の悪循環に陥る国は逆にこれらの要素の一部や全部が欠けている。

 

<悪循環の国>

本書、豊富な事例が紹介されていて面白い。ジンバブエシエラレオネ、コロンビア、アルゼンチンなどなど。世界史の中でメインどころの国ではないので、全く歴史を知らなかったですが、シエラレオネとか、メチャクチャやん…

上巻で問題提起されていた、「貧困についての誤った説」の複線がこの章で回収されていく。地理的にも、文化的にも異なる国々。うまくいかない共通項は収奪的政治、経済制度、といったように論が展開されていく点が痛快で面白かった。

貧困にあえぐ国の政治形態はバラバラなんだよね。アルゼンチンやコロンビアなど一部の国では一応民主主義があり選挙がある。ウズベキスタンのような旧ソ連の支配体制や北朝鮮共産党による一党独裁シエラレオネ長期の内戦状態。

収奪的政治制度が貧困の原因ではあるけど、もっと根源的な歴史的原因があるよなあと思ってしまう。それは①20世紀初頭以前に植民地化されていたか?と②冷戦時の東西のどちらに所属していたか?の2点に尽きるよね。なんか結果と原因がどっちがどっちやねんと思ってしまう。とにかく、今までよく知らない国の歴史の見本市として、本書はめっちゃ視野を開いてくれておもろかった。

 

<旧弊の打破>

一度悪循環に陥ると復活が難しいが、そんな状況から好転した国として、ボツワナと中国が紹介されてる。

 

ボツワナの歴史はスゴイ興味深かった。英植民地の時代を経ても首長による民主的な政治制度が維持されていたことで、比較的すんなり民主化できたというが、クエット・マシーレとセレツェ・カーマが結党したボツワナ民主党(BDP)のエピソードが面白かった。

カーマはングワト族の世襲の族長なんだけど、農業を改革したり、発見されたダイヤモンドを国家のインフラに投資したり、包括的制度の設置に貢献した人物。そしてボツワナはサハラ以南で最も経済的に発展したという、とてつもない知られざる偉人!

もともと、ヨーロッパ人に見つからないようにダイヤモンドなど貴金属や宝石の試掘を禁止していたというのも面白かった。英国の植民地だったが、資源がなく英国が積極的に開発せず、ほったらかしていたから、現地の制度が壊されずに残存できたんだという。

一方のシエラレオネはダイヤモンド利権を部族同志で争い、血塗られたダイヤモンドと呼ばれ利権争いが絶えず…。やっぱり植民地時代に変に資源が見つかってしまい、その利権吸い上げ構造が構築されると、そこから抜け出せない体質になってしまうのね。この辺はもうその国の持っている運命みたいなものも大いにあるな。

 

中国は収奪的制度のもとでの経済発展を達成した事例として出てくる。大躍進から鄧小平の改革による現在の姿になるまでもあらためて勉強。鄧小平の何度権力から追放されても戻ってくる姿はあらためてスゴイな。

しかし、鄧小平の改革は本書では共産党の支配を損なわない程度の改革として、真の包括的経済制度を生み出したものではないとされている。今の中国の姿はこのタイミングでの包括的経済制度への大転換の帰結だけど、今後の習近平政権が目指す「小康社会」っていったいどうなるのかな、と思った。

なぜなら、本書で紹介されている収奪的政治・経済制度下での経済成長を達成した国はアルゼンチンなども含め複数あるが、どこも頭打ちになる。市場から自然にイノベーションが生まれてこないためだ。

ちょっと前までは中国はすごいうまくいっていたと思うが、昨今のアリババの状況や、ゲーム、教育産業への干渉が、どういう帰結になるか興味深い。

 

そろそろ酒飲みたいので本日はこれにて。