「物語 フランス革命」を読んだよ!③

10月にもなると今年も終わり…て感じますね。年をとるごとに時間の流れが早くなっていることを感じますわ。

安達正勝著「物語 フランス革命」を読了。やっぱり、噛めば噛むほどフランス革命って面白いムーブメントだったと感じますね。今回読んだ王政打倒から恐怖政治のあたりなんか、ホント近代の怪談。理想を求めて作り出された組織が気づいたら粛清の嵐に…

 

ロベスピエール

やっぱ、知ってたけど、ロべスピエールがやっぱメチャやばいんだよな…

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すごい平和そうな顔しながら、理想の社会を作るという崇高な目的のために、とてつもない人間を断頭台送りにしてしまう…

歴史の皮肉の頂点に立つ男、そんな感じ。1793年12月革命政府の成立の際のロべスピエールの演説が本書に引用されているけどメチャメチャトリハダものの演説。

 

「自由と平等を心静かに享受することである。この永遠の正義が世に君臨することである。自由と平等の原理が刻まれているのは大理石や石にではなく、すべての人間の心の中である。自由と平等を忘れてい奴隷の心の中にも、これを否定する暴君の心の中にさえも刻まれている。
我々は低俗で残酷なあらゆる情念が鎖につながれ、心広くも全をなそうとするあらゆる情念が法によって呼び覚まされるような世の中になることを望んでいる。こうした世においては、野心とは栄光に値しようという要求、祖国に役立とうという欲求んあおである。
一言でいえば、我々は自然の願いを満たし人類の運命を成就し、啓蒙思想の約束を果たすことを望んでいる。フランスが、諸国民の規範にならんことを、抑圧するものにとっては恐怖に、抑圧されている人々にとっては慰めにならんことを、世界の華とならんことを」(203ページ)

 

ホントに崇高だし、やっぱり言葉が巧み。

この本読んでよかったーと思ったのは、人物のこまかーいとこまで結構いろいろ書いてあって、ちょっとイメージしやすかったとこ。ロベスピエールの生い立ちも、書いてあって、地方都市/アラス出身で両親が小さいころにいなくなって、兄弟バラバラで暮らさざるを得なかったり、啓蒙思想に若い時から親しみ、ルソーの大ファンで本人に会ったことがある、とか、ロラン夫人のサロンに出入りしてたけど、彼女が懐柔できなかった唯一の男だった、とかとか。

絶対王政時代に対外戦争しすぎて疲弊する国家の地方都市での生活ってどんなものだったのかなーと、違う興味も掻き立てられますね。苦労した幼少期から革命の時代に32歳で政治家になって世界を変えてやろうと燃える心の行きつく終点が、くしくも自分自身も断頭台へ…

ホント、ドラマチック。

 

<第二革命>

第二革命って言葉も、習ったような気もするけど忘れてました。

  
第一革命 : バスティーユ攻略→1792年8月10日王権停止
第二革命 :王権停止以後。国王を空気のように感じていた民衆が、革命に物質的に参加。  

ジロンド派ジャコバン派の政争が繰り広げられるけど、ジロンド派が「エリートによる革命政府の運営」を目指していた、っていう点も改めて気づき。目指すところの違う人たちが一つのムーブメントを起こしつつも、途中から、方向性の違いで仲たがいしていく…。インディースからデビューして数年で音楽性の違いを理由に解散しちゃうバンドみたいな感じなのか…笑

 

ジロンド派ももれなく粛清されている。1793年10月にロラン夫人も逮捕して処刑。ロラン夫人の回顧録、ちょっと読んでみたいな。夫の名前でバンバンメール出して、政治運動をあおってた人でしょ。やっぱり興味ある。処刑の際の有名な言葉も…

「自由よ、汝の名において、なんと多くの罪が犯されたことか!」

この辺も、フランス革命ってやっぱりヤバいよね。理想と理想がぶつかり合って、断頭台の露と散る…

 

ジャコバン派

ジャコバンの語源も本書にある。解散したジャコバン修道会の建物を利用して集会していたからとのこと。サン・ジュストの演説で気になったとこもメモしておく。

「幸福はヨーロッパにおいて新しい概念である」
「諸君がフランス領土の上に、ただの一人の不幸な人も、ただの一人の抑圧者も欲していないということをヨーロッパが学ばんことを。このフランスの例が地球上に実を結ばんことを。このフランスの例が地球上に美徳への愛と幸福を伝播せんことを。幸福はヨーロッパにおいて新しい概念である」

 

それまでの絶対王政では人民は領主の所有物だったと考えると、これは民衆にとってすごい熱いメッセージだったのでは?革命成就のためなら命だって捧げていい、という時代の空気を端々に感じる。

そして、革命によってはじめて人々が幸せに暮らせる社会が建設できると純粋に信じていた。ここが怖いとこなんですよね。ここから社会革命を加速させる動きになっていくけど、貴族の財産を没収して平民に分配するなど、義賊的な政治なのね。現代日本でも分配が叫ばれてるけど、ホント、それをガチでやったのね。

 

さらなる理想成就に向け、ジャコバン派内でも、ロベスピエールが身内を排除する流れ。同派閥の有力者たちがエベール派とダントン派があいついで革命裁判所で死刑判決を受ける。下記もちょと気づき。左右両方を粛清した。
        
エベール派        民衆運動を率いて革命政府に圧力をかけてきた
ダントン派        寛容派、エベール派と対立しつつ、恐怖政治を批判

 

ホント、不思議なんだけど、自由、平等、博愛が、なんで殺しあう結末に?と不思議に思う。結局、ある政治組織が強すぎる権力を持ちすぎると政治的意見を通すための暴力行為がまかり通るようになって、最終的には殺人にまで行きついちゃうってことなのかな。理想だけでは広範な人間社会の利害は調整できない…てことかなあ。

 

<恐怖政治の終焉>

行き過ぎた恐怖政治はテルミドール9日のクーデターで終焉。以降、バラスを中心とした総裁政府に移行するけど、今度は腐敗の温床に。

 

昨今、日本でも分配がキーワードだけど、フランス革命を見てると行き過ぎた分配は混乱を招くかもしれませんね。もともと、貴族と聖職者が課税に反発して革命が起き、今度はメチャメチャリベラルな理想主義者が政治の中枢で平等を目指して分配を行う…

で、恐怖政治に反発して今度はロベスピエールが処刑されるけど、総裁政府はもっとひどくて、インフレで国民生活がメチャクチャに…

下記引用。

 

「あの頃は血が流れたが、パンは不足していなかった。今は血は流れなくなったが、パンが足りない。こうしてみると血が流れることも必要なことだったのだ」とつぶやきあった

 

理想主義に燃えていたジャコバン派の政治の著者の総括もメモ。

 

ロベスピエールたちはフランス革命の歴史的枠組みを超えたもっと先のこと考えていた。これまで人類が経験したことがないような正義の社会を構築したいという理想があった。貧しさに苦しむ人のいない社会、すべてん人が自由に暮らせる世の中というのは
絵空事ではなく、強い現実性を持っていた。」(266ページ)

 

<帝政へ>

この後、ナポレオンが登場して帝政にいたるまでも書かれているけど、ここでは端折らせていただきます!しかし、このフランス革命の帰結の結論部分も明記されて、この一文にたどり着くために、いろんな人物の群像を知れる本書はメチャメチャ面白かったです。

 

「これまで革命を主導してきた富裕市民層(ブルジョワジー)は、自分で政権を担えるほど十分には政治的に成熟していなかった。そこで、祖国の英雄として、絶大な威信を持つ軍人に政権をゆだねざるを得なかった。」

 

ちょっと、この結論だけだと物足りない部分もあるので、自分自身、もっと勉強が必要だと感じています。政治的成熟度だけが帝政に戻った理由ではなかったはずで、他の政治革命との歴史的背景の違いをちゃんと抑えないといけないと感じる。

「政治的成熟とは何か?」が自分の中でわかってないなー

 

なーんて。

ただこんなにフランス革命にハマるとは思わなかった。出てくる人物一人一人にドラマがあって面白い。中世から近代への歴史的カオスに多くの英雄が理想に、夢に思いをはせた。名もない民衆が、自由、平等、博愛のために戦った…

ホント、歴史ってのはロマンですな!